3/18/2016

葡萄酒いろのワンピース / une robe bordeaux

三島由紀夫という小説家について、私はそれまで「割腹自殺を図った過激な人」という偏ったイメージを抱いていました。
そして、いわゆる“食わず嫌い”により、長らく三島文学を敬遠していました

ところが、ひょんなことから『女神』という小説を知る機会があり、この歴史的作家の本を手にしました。そのきっかけが、前回の記事で触れたエッセイ『おしゃれの視線(光野桃 著)』だったのです。

エッセイの中で、著者が『女神』に登場する朝子という娘の装いを想像し記述している箇所があります
父親に連れられたバーで、着ているワンピースと同じボルドー色のデュボネというお酒を選ぶシーン。そこに記された「葡萄酒色」という文字から、私は目が離せなくなりました。

「紫」でもなく「ボルドー」でもなく、葡萄酒色のワンピース
聞き慣れない響きに強烈な印象を受け、もっとその世界に触れたいと『女神』を買いに走りました。
そして、葡萄酒色が「葡萄酒いろ」であった事実を知り、粋なファッション描写にしばし心を奪われたのでした。

過激な最期を遂げた人物が記した、繊細かつ大胆で美しい日本の装い。
「葡萄酒いろ」のワンピースに思いを馳せながら、文学に触発されるおしゃれを堪能しました。

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