3/13/2016

近くの色遠くの色 / la couleur de la peinture

近頃は足が遠退いていますが、かつてはよく美術館に通っていました。
特に、フランスを訪れた際は「美術館の日」と称して、ひとつの美術館に一日中入り浸ったり、数か所をハシゴして回ったり

ある時、パリにあるルーブル美術館の一室で遠くから絵を眺めていました。
すでに何十枚という絵を見た後で足腰が疲れていたこともあり、ぼんやりと佇み休憩をしていたのです
すると私が一人で暇そうに見えたのか、相手も暇だったのか、「絵はそうやって離れて見るといいよ」と、その場にいた監視員が話しかけてきました

そのムッシューいわく、日本人は絵を近距離で鑑賞する人が多いそう。
「細部に目が行き届く日本人ならではだよね」と私を立ててくれましたが、画家が表現する色を知りたければ離れて見ることを勧められました。

確かに、寄たときと離れた場合では、同じ絵画でも全く違う顔を見せることがあります。暗い絵だと思っていたら実は明るい印象だった、というように。
 近くで観察することも悪はないけれど、必ず最後に一歩下がって全貌を見てほしいと、その監視員は別れ際に言いました

休憩をして歩く元気を取り戻したので、来た道を戻り意識して全ての絵を遠くから眺めたところ、何枚かは一度目と違って見えました。私も知らぬ間に、細部に目を奪われていたのです

今でも絵を前にすると、あのムッシューの言葉を思い出します。
「近くの色と遠くの色、絵画には様々な見え方があるんだよ」と。

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